契約書なしの賃貸だとトラブルのリスクが高いって本当?
オーナーが自分で管理している物件など、特殊な理由から賃貸契約書を用意していない物件が時々存在します。
このような物件は審査が緩かったり、入居費が安かったりする場合も多いので、夜職や水商売の方にとって魅力的にうつる場合もあるでしょう。
しかし、契約書なしの賃貸には、さまざまなトラブルの危険性が潜んでいます。
この記事では、そんな契約書なしの賃貸で起こりやすいトラブルについて解説していきます。
賃貸の契約書なしの口約束でも契約の効果はあるの?
契約書がない場合って、契約自体も無効になるの?
いえ、賃貸契約書がなくても、口約束をしていればその内容が賃貸契約となります。
そもそも賃貸契約書がない場合に、物件に関する取り決めは履行する義務があるのか気になりますよね。
実は契約書がなくても、契約時に口頭で交わした約束は賃貸契約としての効力を持ちます。
そのため物件オーナーが定める物件に関する使用条件は、基本的に遵守しなければなりません。
口約束での賃貸契約で最も恐ろしいのが、契約時に話になかった条件を後から付け加えられてしまうことが多いという点です。
一般的に賃貸契約書に記載されている契約事項には、以下のような内容が含まれています。
- 賃貸契約の期間
- 更新時の条件
- 入居時に必要な費用
- 退去時に必要な費用
- 修繕に関する取り決め
- 共用部の使用方法に関する取り決め
- 退去に関する取り決め
- その他禁止ルールなどについて
このような細かい事項を口約束で全て決めておくのは不可能に近いです。
そのため、入居中や退去のタイミングで、オーナー側と賃借人の意見が食い違い、トラブルに発展してしまいます。
またこの手のトラブルは、いわゆる水掛け論に陥りやすく、解決が難しい厄介なトラブルに発展しやすいので注意しましょう。
賃貸に関する民法の決まり
契約書なしの賃貸契約でも、全ての口約束を守る義務があるわけではありません。
賃貸の契約に関しては、オーナーと賃借人の契約の先んじて、民法で決められている内容も多いです。
例えば賃貸の途中解約に解約に関しては、民法618条や借地借家法で下記のような内容が規定されています。
他にも物件の修繕に関する費用負担区分に関しては、民法606条で下記のように規定されています。
このように賃貸物件の契約を口約束で行ったからと言って、どのような内容でも必ず履行しなければいけないわけではありません。
契約書の無い賃貸契約ではオーナーが「退去の時には〇〇の費用を払ってもらう」など一方的な条件を提示してくるケースもあります。
しかし、全ての要求を受け入れる必要は当然ありません。
法外な費用の支払いや、明らかにおかしい条件に関しては、法律の基準から逸脱していないかどうかを確認してみるようにしましょう。
契約書を交わさないことで発生するトラブル
契約書がないとどんなトラブルになる可能性が高いの?
賃貸で契約書が用意されていない場合には、さまざまなトラブルに巻き込まれるリスクが高くなります。
以下ではそれぞれトラブルの詳細や原因について、確認していきましょう。
物件の使用ルールに関するトラブル
賃貸契約書がない場合には、物件の使用方法に関する取り決めがあいまいになりやすく、それが原因でトラブルに発展しやすいです。
使用方法で大きなトラブルの原因になりやすい内容には「ペットの飼育」「楽器持ち込み」「喫煙」などがあります。
契約時にこれらの条件に特段の制限がなくとも、後から禁止事項だと告げられてしまうケースも。
また居室を店舗として使用する住人が現れて、物件全体のセキュリティ面接に問題が生じてしまう原因となることもあります。
このようにこの物件では何ができて、何をやってはいけないのかが明確でないと、入居後にトラブルに発展する危険性は非常に高いです。
設備の修繕に関するトラブル
設備の修繕に関するルールは、先述した民法606条などで修繕義務に関する規定が明確にされています。
しかし、電球の交換や水栓やトイレの水漏れの原因である、パッキンやコマの修繕にはオーナー側が特約を設定し修繕費用を借主負担とすることも可能です。
また破損した物が設備ではなく、残置物であった場合には、賃借人が修繕費用を負担しなければならなくなります。
ただでさえ区別がつき難い残置物と設備は、しっかりと契約書などに記載された上で説明を受けないと判断できないのも無理ありません。
パッキン交換などの小規模修繕も業者に依頼すると1万円程度の費用はかかります。
契約期間に関するトラブル
契約書に明記してある内容で重要な項目に物件の契約の期間があります。
一般的な賃貸借契約では契約期間を2年間として、2年ごとに契約更新をしている場合がほとんどです。
しかし契約書がない場合には、契約期間の定めがはっきりしていことも珍しくありません。
またオーナー側は定期借家で貸したつもりになっており、一定期間が経った時に退去を迫られるというケースもあります。
また契約を終了する場合の、通告期限に関してもしっかりとした明記がないとトラブルに発展するリスクがあります。
例えば特に取り決めがなく、3ヶ月前に退去を伝えたにも関わらず、オーナーからは6ヶ月前には退去を教えてもらわなければ困るなどと言われてしまったケースもあるようです。
退去時の費用に関するトラブル
退去時の原状回復費用に関するトラブルは、賃貸物件で発生しやすいトラブルの中でも群を抜いて相談件数の多いトラブルです。
国民生活センターには原状回復費用に関するトラブルの相談が、年間13,000件以上寄せられており、その数は賃貸に関する相談件数全体の4割程度にのぼります。(参考:国民生活センター)
特に契約書が無い物件などで、初期費用や更新料も設定されていない場合には、退去時にクリーニング費として高額な費用が請求されることも。
他にも「入居時に費用をとってないんだから」と、退去費という名目で費用請求される可能性もあります。
ただし原状回復費はオーナー側が負担するべき項目と、賃借人が負担するべき項目が、国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」にまとめられています。
もし退去費やクリーニング費として、費用を請求された場合には、内訳のわかる書面をもらうようにしましょう。
更新料に関するトラブル
通常の賃貸物件では賃貸契約期間が定められており、契約を更新するさいには更新料を支払う地域も多いです。
更新料は家賃の1ヶ月程度と設定されている場合が多くなっています。
しかし、更新料は法律で支払い義務が定められているわけではなく、あくまでも賃貸契約時に支払いの合意があった場合に発生する費用です。
契約書がない場合には、本当に契約時に更新料が設定されていたのか確認することができません。
契約時に話しがなかった場合でも、オーナー側が慣習に従って急に請求してくるケースも。
当然、最初から説明のなかった費用の支払いは、トラブルに発展するリスクが非常に高いです。
夜職の方も要注意!契約書を用意していない物件によくある理由とは
契約時に契約書を用意しない物件は、そもそも問題のある物件である可能性もあります。
そうだよね、普通の物件なら契約書を用意しておくもんね。
契約書がない物件は、契約書を用意することができないような、訳あり物件であることも少なくありません。
そのような物件の中には、建築基準法や安全条例に違反してしまっているような物件もあります。
職業が理由となって賃貸契約が思うように進まないからといって、このような契約書をしっかり用意してくれない物件を借りるのは危険です。
「賃貸の審査が通らない」などのお悩みがある方は、水商売や夜職の方を専門に物件紹介を行っている「ナイトハウス」にぜひご相談ください。
それでは以下で、契約書がない物件につきまとうリスクを詳しく確認していきましょう。
オーナーが自主管理している
まず一番最初に考えられる理由は、オーナーの自主管理物件です。
意外かもしれませんが、募集や契約まで不動産屋を通さず全て自己管理しているオーナーは、賃貸物件全体の約1割にものぼります。(参考:国土交通省)
つまり10部屋に1部屋は不動産のオーナーが、直に物件を管理しているということです。
もちろん自主管理オーナーの中には不動産の知識が豊富で、しっかりとした対応をしてくれる方も少なくありません。
その一方で、不動産屋への管理費を支払いたくないから、という理由で自主管理をしている不動産オーナーもいます。
このようなオーナーの物件の場合管理が粗雑で、修繕などに関してのトラブルが発生するリスクは高くなるでしょう。
契約の段階でオーナーを見極めるのは難しいので、できる限り不動産屋を通して物件を探すことをおすすめします。
違法な物件
契約書を用意しないということは、本来賃貸契約ができないような物件である可能性も考えられます。
よくある違法物件の例として挙げられるのが、建築基準法や都の条例に従っていないシェアハウスなどです。
シェアハウスは規模によって適用される法律に違いがありますが、戸建以上の物件には下記のようなルールがあります。
- 居室に窓を設置すること
- 最低4.3畳の居室面積を確保すること
- 自動火災報知設備を設置すること
これらのルールに抵触している物件は、消防法や条例違反の物件です。
これらの条件が守られていない賃貸物件は、一定数存在していることが確認されており、近年その取り締まりが強化されています。
賃貸契約書を用意しない物件には、このような違法物件も含まれるため要注意です。
オーナーに無許可な又貸し
最後に紹介するのが又貸しの物件です。
本来賃貸物件はオーナーが貸出していますが、一部の物件で無許可で又貸しが行われています。
又貸しの対象はさまざまで、民泊などとして活用されているケースも。
また宿泊施設ではなく、期間の定めのない家具付き物件として貸出されている場合もあります。
又貸しは物件オーナーが了解している場合には問題ありませんが、無許可の物件は民法612条違反です。
また又貸しが横行している物件などは審査が緩く、多くの人の出入があるので、物件のセキュリティにも問題が起こりやすく危険です。
もしもトラブルに巻き込まれてしまった場合は?
今契約書なしの物件に住んでしまっている場合にはどうしたらいいの?
契約書は入居後でも発行を求めることができますよ!
もしもすでに契約書なしの物件に住んでいる場合には、改めてオーナーに契約書を作成してもらうよう相談してみましょう。
契約中の物件でも改めて契約書を作成してもらうことは可能です。
また契約書が発行できない場合には、必ず理由を確認して納得できない場合には早めの転居をおすすめします。
また契約した記憶の無い費用の請求や、独自のルールを適用されて困っている場合には、下記のような窓口に相談する方法も検討してみてください。
- 国民生活センター(消費者ホットライン:188 に電話)
受付時間:平日10~12時/13~16時 - 市区町村の相談窓口(各市区町村の生活課などへ連絡)
- 不動産適正取引推進機構 (電話番号:0570-021-030)
受付時間:平日10~16時 - 日本消費者協会 (電話番号:03-5282-5319)
受付時間:水曜日・金曜日 10~12時 13~16時半 - 法テラス(電話番号:0570-078374)
受付時間:平日9~21時/土曜日9~17時
賃貸で契約書がない場合には要注意!
この記事では賃貸で契約書がない場合のリスクについて解説してきました。
契約書は賃借人だけでなく、賃貸人を守る効果のある書類です。
その書類を用意しないということは、物件やオーナーに問題がある可能性も少なくありません。
そのためさまざまな賃貸のトラブルに巻き込まれる可能性が非常に高まります。
直接契約の物件などは審査がない場合も多く、夜職の方にとっては魅力的に思えるかもしれません。
しかし、不動産屋を通さないことへのリスクも考慮して、物件を選ぶようにしましょう。
記事内では夜職の方の審査に強い不動産屋も紹介してきましたので、ぜひ参考にしてみてください。